木部塗装52種類(75通り)の曝露試験1年後報告

新築、改修の際に屋外の木部に塗装する塗料として使用されている各種塗料、52種類(75通り)の経年劣化を比較するために曝露試験をおこないました。

木部の塗装には大別して、木目が見えるように塗る方法とエナメル仕上とよぶ塗り潰し塗装する方法があり、木部用塗料として売られている塗料のほか、木部用ではないが木部に塗られることがある塗料を集めました。


■塗り板の設置まで

まずは屋根に載せる架台を作るために、地元の木材屋さんから木を提供していただき、地元の宮大工さんにお願いして塗装した板の設置角度を考慮して作成していただきました。

雨風が当たる外部ですので、少しでも保護するために誤発注してしまい在庫になっていた木部塗料で簡易的に塗装しました。

今回使用する板は内、外壁材としても使用される杉板です。

数年間曝露予定のため、塗装面以外からの劣化を防ぐため(気持ち程度ですが…)裏面と小口を保護塗料で塗装しました。

板を架台に固定していきます。

縦に5段、横に15列の75枚の試験体を設置しました。
これで準備完了です。

今回使用する木部塗料です。(これで全部ではなく他にもあります)

木部塗装試験の塗料

面積に対して十分な量を全て揃えるため秤を使いました。

4月14日、4月16日の2日間にわけて、同じ刷毛を使用し1回目、2回目とインターバルをおいて塗布していきます
ネタはなるべく使い切るように塗りました。

塗布作業中に撮影した写真です。
手前に並べてある板は設置した板と同じものを塗っておき、後年の劣化状態検証の際に、隣り合わせで写真を撮るときに使用するために保管しておきます。

2023年4月19日
すべての塗り板への塗装が完了して、架台ごとクレーン車で屋根に上げました。

下は設置した翌年に撮影した写真ですが、木部塗装だけでなく、外壁や屋根などほか、シーリング材のテストも行いましたので、架台は全部で13台作成し、屋根の上には11台あります。
黄色い丸で囲ってあるのが木部塗装試験の架台です。

試験体の角度は南向き35度で、南面垂直の場合の2.5倍の促進耐候試験になります。
これにより、1年で、南面外壁に塗った場合のおよそ2.5年相当になります。

朝方から夕方まで1日中太陽光があたりやすい場所で、尚且つ夏は暑く冬は冷え込む地域のため条件はかなり過酷だと思います。
日本の年間降水量1,700mmに対して、ここ岐阜県中津川市は1,900mmという統計があり、雨も多いほうです。


■設置1年後

設置から約1年後、2024月4日に写真の撮影を行いました。

今表示されている写真は設置当初のもので、比較を容易にするため、
PCの場合は、マウスポインタを乗せると1年後の写真に変わるようにしてあります。
スマホの場合は、写真をタップすると1年後の写真に変わり、元の写真に切り替えるには写真の外側をタップしてください。

スマホの場合は上の写真だと画像が小さくてわかりにくいと思いますので、左右15枚を5枚の幅で3分割で撮った写真での比較を下記に作成しましたので、同様に切り替えてご覧ください。


■まとめ

屋外木部に使われる塗料のおおまかな括りは以下のような分類になります。

●エナメル仕上げ、木目なしの塗り潰し塗料
(水性/溶剤型、1液型/2液型、木部用/汎用などいろいろ)

●造膜塗料または半造膜塗料で木目なし、または、ほぼ木目なしになる塗料
(「コンゾラン」や「オスモ カントリーカラー+」など)

●含浸して造膜せず木目を見えるように着色する塗料
(「キシラデコール」「ノンロット205N」など)

●クリヤー塗料(若干色が付く場合もあるが木目をそのまま見せる透明塗料)

屋外で木材を建材として露出使用する場合には、腐食・反り・割れ・灰色化や、虫・カビ等の生物汚染の進行を抑制するため、および美観の観点から塗装が必要な場合があります。

そして、屋外木部塗装の常識として、一般的に、上記の
上から順に耐久性が高い傾向があり、下から順に早期のメンテナンスが必要となります。

造膜・塗り潰しの塗料であっても、外壁や屋根の塗装に比べると木部の塗装は短命な傾向にあります。

屋外使用の木部を長持ちさせるためには、外側だけでなく、全面を塗るとよい、ということはよく知られているやり方で、昔の枕木のように薬剤に漬け込んでしまうのは無理でも、外壁材として使用する場合であれば、見えている表側だけでなく、裏側・小口も含む全面を塗装してから外壁に貼る方法をおすすめします。

しかし、改修工事の時に塗装業者ができることは、ほとんどの場合、見えている外面しか塗装出来ません。
それすなわち、塗れない部分から浸み込む水分が原因で反ったり腐ったりしてしまいます。

本試験のこの経過を見てわかるように、木を建材として屋外使用される場合は、メンテナンスも見越した選択をされないと、最近話題になった北関東の美術館のように、後年 大変な費用がかかってしまう場合もありますので、見てくれの良し悪しだけに捉われない十分な検討が必要です。
(※環境や木の種類などにもよります)

この木部塗装暴露試験は今後も経過を追ってまいります。


記事提出者:大吉建築塗装店
編集:曽根塗装店

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